カジノ法の真意を読む。カジノ法案、否、IR推進法案。

いわゆる『カジノ法案』が成立した。

テレビ等のメディアでは盛んに、賭博を解禁・合法化する法案として批判されている。
本法案の一番の争点として、ギャンブル依存症者の拡大への懸念が取り上げられている状況に違和感を感じたため、そもそもカジノ法案とは何かを知るために1冊の本を読みました。

本のタイトルは『カジノ法の真意』(岩屋毅 著) 2016.10.3

本書の著者は、衆議院議員で、カジノを含む統合型リゾートの議論を進めてきた国際観光産業振興議員連盟(IR議連)の幹事長だ。

テレビ等で賭博解禁法案としてレッテルを貼られているカジノ法案の正式名称は正確には「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」であり、いわゆるという言い方では『IR推進法案』というべきものである。

「日本をギャンブル大国にしたいのか!」といった野党議員のコメントや、「日本のおもてなしではなく、ギャンブルで稼ぐのか!」といったニュースキャスターの批判コメント等に違和感を抱いていた。
違和感の理由としては、そもそも日本には至る所にパチンコ店が存在し、また、競馬・競艇・競輪等の公営ギャンブルもそのイメージアップに人気芸能人が出演するテレビCMが盛んに流されている状況であり、既にギャンブル大国と思っていたからだ。

日本にはパチンコ店が約1万2千店舗、公営ギャンブル施設は247箇所、ある意味ギャンブルである宝くじ売り場は1万5千箇所といった状況だ。

実際に日本のギャンブル依存症者数は536万人と推定されており、その依存症有病率は男性で約8。8%、女性で約1.8%と、アメリカの1.5%と比べても現時点で日本は格段にギャンブル依存度が高いギャンブル大国なのである。
(パチンコは法律上は賭博ではなく遊戯であるが、ギャンブル依存症者数には含まれる)

ちなみに、賭博等で主催者側が利益として客から控除する手数料率は以下と言われている。
 宝くじ55%>公営競馬25%>パチンコ8%〜13%>カジノのバカラ1.3%
(手数料率を引いた分を客同士で奪い合うイメージ)

そうした事実がある中でことさらIR法案をカジノ法案として批判してギャンブルの弊害を論じるのであれば、そもそも足元でやるべきことがあるだろうと思っていた。

そんな中、そもそもカジノ法案とはどんなものかを知るために本書を購入した。

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IR推進法の目的

本法案の本来の略称としては「IR推進法」である。
IRとは”Integrated Resort”の略であり、日本語で直訳すると統合型リゾートである。
国際会議場、宿泊施設、ショッピングモール、アミューズメント施設等を備えた統合型リゾート施設の一部としてカジノを含めるための法案である。

本書の趣旨であるが、それでは、そもそもなんでカジノを含む統合型リゾートを推進するのか?

ひとことで言えば、訪日外国人観光客数及びその国内消費額の増加が目的となる。

2015年に訪日外国人観光客は1,974万人と過去最多を記録している。
今後は2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人のインバウンドを目指し、旅行消費額もそれぞれの年で8兆円、15兆円が目標とされている。

15兆円という規模は現在の自動車の輸出額規模が約12兆円ということで、相当の規模であり、実現すれば日本経済に与える影響は大きい。

こうしたインバウンドの受け皿としてIRが推進されるということだ。
ただ、本書ではIR単体でそれが実現するのではなく、IRをハブとして日本の観光資源を更に活用する必要があるといった趣旨が述べられている。

例えば日本の神社仏閣を例にしても、その保存・保管のみ重きが置かれているが、もっと訪日外国人へ訴求するような取り組みを並行して行うことが重要であり、IRはそうした観光エリア・スポットへ訪れてもらう拠点という考え方である。

要はIR推進法案の目的は訪日外国人観光客の受け入れ増、消費額増額施策であるので、批判としてそもそもIRの推進がそうした目的達成に有効なものかを検証し、有効で無ければその対案・修正案を議論するのが本来の争点であると思う。

カジノ設置におけるギャンブル依存症対策

確かにカジノ設置に伴うギャンブル依存症対策は重要ではあると思う。
ただ先に書いたとおり、IR推進法の目的は訪日外国人及びその消費額の増であるとすれば、そもそも日本人のカジノ出入りに対して何らかのルール・規制をかければある程度クリアできる課題にも思える。

仮に何の規制も無かったと仮定しても、確かにギャンブルの間口としては増えることとなるが、そもそもギャンブル大国の日本においては、パチンコや競馬等のプレイヤーのカジノへの移行、もしくはパチンコ・競馬等は嫌いだがカジノはやってみたいといった人達の出入りが想定される。
この日本の状況の中、カジノによりギャンブル依存が一気に加速するようには感覚的には思えない感じである。

ただ、そこはリスクが想定されるので色々な知恵で対策を考える必要はあると思う。

インバウンドや富裕層に焦点を当てるのであれば、ジャストアイデアで日本人に対して以下の規制をかける案などが考えられる。
『入場料を科す』
『入場者の年収で入場制限』
『一定のデポジットを求める』
『ホテル等の施設利用者でなければカジノに入場できない』
『日本人は入場禁止、もしくは入場回数を制限』 等

杉村太蔵さんがテレビで「入場料100万円、最低投資資金1,000万円」という縛りをかけ、あくまでも富裕層をターゲットとすれば良いという発言をしていたが、それも一案だ思う。
カジノに行きたい私としてはもう少し敷居を低くして欲しいですが。

IR推進法の今後について

本法案についてはあくまで基本法なので、今後、ギャンブル依存症対策等の詳細内容については今後議論されて具現化されて行く必要があり重要なポイントだと思います。

依存症対策も重要ですが、訪日外国人へ訴求するIRのあり方の議論がより重要だと思います。
カジノは世界の140カ国で行われており、世界的にはメジャーなものですがその反面、飽和状態とも言われているようです。
特にアジアでは、シンガポール、韓国、マカオ等の先例があり、それぞれに何らかの課題があると思います。
そうした課題をしっかりと認識して、日本独自の魅力的なIRの実現がそもそもの目的であり、カジノはその中の一要素に過ぎないと思います。

色々書きましたが、私個人的にはカジノに魅了されており、また海外のカジノに行きたいと考えているところです。。

マカオでの初めてのカジノ体験記

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